土曜日, 6月 18, 2005

☆永訣の月 2002



「永訣の月」は、芸術家村山直儀が、2002年春、執念で完成させた渾身の一作。題材は、「源義経」が奥州平泉の衣川の館(高館)で自刃して果てる前夜という設定。煌々と月光が、奥州の大河北上川に照り映えている。義経は、迫り来る運命の時を感じながら、悠然として月明かりに照らされた奥州の山河を眺めている。己の生涯において、為すべきことは為したという強い充足感が、その超然とした表情の中に滲み出ている。実に美しく威厳に満ちた義経像である。義経はもはや傍らの鎧を身に着ける気はない。だがその背後に控える武蔵坊弁慶には、人生最後にして最大の仕事が迫っている。押し寄せてくる敵兵を防いで、主君義経を極楽往生させるという大仕事だ。二人の表情の違いに見える心理的コントラストが実に見事だ。ここに、義経と弁慶という伝説の勇者たちは、村山直儀の芸術によって、800年の時空を越えて、蘇ったのである。(佐藤弘弥)